ドリー・ペイン・トッド・マディソンは、その魅力と優雅さ、そして政治的手腕で知られる、時代を代表する人物の一人である。
第4代アメリカ合衆国大統領ジェームズ・マディソンの妻であり、19世紀初頭のアメリカの政治・社会文化の形成に重要な役割を果たした。
ドリーの生まれ
ドリーは1768年5月20日、ノースカロライナ州のニューガーデンで生まれた。
クエーカー教徒のプランター兼店主ジョン・ペインとメアリー・コールズ・ペインの8人兄弟の4番目であった。
彼女は厳格なクエーカー教徒の家庭で、読み書き算盤の基本的な教育を受けながら成長した。
最初の結婚
1790年、ドリー・ペインはフィラデルフィアに移り、そこで弁護士で実業家のジョン・トッドと出会い結婚した。
二人の間には、ジョンとウィリアムという二人の息子が生まれる。
しかし1793年に夫と下の息子は黄熱病で死亡してしまう。
ジェームズ・マディソンと再婚する
1794年、ドリーは、亡き夫の親友であった連邦議会議員のジェームズ・マディソンと知り合った。
【ジェームズ・マディソン】
二人はすぐに恋に落ち、1794年9月に結婚した。
そしてドリーはマディソンの最も親しい助言者、最もよき同志ともなった。
大統領選挙での勝利に貢献する
アメリカ大統領の妻として、ドリーは国家の政治的、社会的文化の形成に重要な役割を果たした。
彼女は、その魅力、優雅さ、政治的手腕で知られ、ホワイトハウスで議員、外国の高官、社会のリーダーなどのゲストをもてなす人気のホステスであった。
マディソンが大統領選挙に勝利できたのは、彼女の貢献が大きかったとされる。
マディソンはどちらかというと陰気な性格だったが、社交的なドリーの支援によって、政治家としての人気を高めることができたのである。
慈善家として活動する
また、ドリーは慈善家としても知られ、困っている人々を助けることに尽力した。
女性やアフリカ系アメリカ人の権利を強く主張し、教育や識字率の向上に努めた。
また、退役軍人の支援や、全米初の孤児院の設立にも尽力した。
ワシントンの肖像画を救い出す
ドリーの最も有名な功績は、1812年の戦争中にホワイトハウスからジョージ・ワシントンの肖像画を救い出したことである。
1814年、イギリス軍によってホワイトハウスが焼き払われた際、彼女の機転と勇気で肖像画は救出された。
夫の死後、ワシントンに戻る
夫の大統領退任後、ドリーとマディソンは、ヴァージニアの地所であるモンプリエに隠棲した。
しかし1836年に夫が亡くなり、ドリーはワシントンDCに戻る。
彼女の帰還は歓迎され、議会では特別に席が設けられるほどであった。
しかし息子のペインが浪費家であり、このためにドリーは経済的に苦しめられることになる。
議会はその苦境に配慮し、夫マディソンが残した文書を買い上げ、また信託基金を作るなどして支援した。
ドリーは月に一度はパーティを開いて来客をもてなし、以前と同じように社交界に影響を持ち続けた。
葬儀でファースト・レディーと呼ばれる
ドリーは、1849年7月12日に81才で亡くなった。
葬儀の際にはザカリー・テイラー大統領から「彼女はまさにファースト・レディーでした」と賛辞を送られた。
これが現在も大統領夫人が「ファースト・レディー」と呼ばれる元になったとされている。
現在、その邸宅は一般に公開され、彼女の記憶とアメリカ史への貢献に捧げる博物館として運営されている。
最後に
ドリー・ペイン・トッド・マディソンは生涯を通じて、知的で独立心が強く、優れた女性として知られていた。
夫の大統領在任中と在任後のアメリカ社会に対する彼女の貢献は、重要なものとして認識されており、歴史における彼女の地位は確固たるものとなっている。
